」カテゴリーアーカイブ

国会図書館デジタルコレクションの効率の良い検索

膨大な資料があるのでとても興味深い国会図書館デジタルコレクションなのですが、資料の数が多すぎて面白そうな資料が探しにくいというありがたい悩みがあります。

最近資料検索の方法を色々と工夫しているのでまとめておこうと思います。Web検索に検索ノウハウ的なものがあるのと同じように、図書館での資料検索にも独特の技法があるように感じています。

検索する項目を指定する

資料を検索する項目として以下の3つがあります。

  • 書誌情報
  • 資料の本文
  • 資料の目次

書誌情報というのはその資料のメタデータ的なもののようです。資料の中身を示す情報なので、キーワードがこの項目に含まれているものはかなり目当てのものに近いと言えます。

資料の本文は読んで字の如く、資料を全文検索してヒットするかどうかです。広範囲な検索ができる一方で、その分ノイズも増えることになります。

資料の目次はその資料に目次情報がある場合にそこにキーワードが含まれているか否かです。書誌情報にキーワードがなくても資料の目次の見出しに含まれているのであれば、知りたい情報が一定程度含まれていると言えると思います。

まずは書誌情報と資料の目次に絞って検索をしてみて、それらをチェックし終わったら資料の本文でも検索してみるという使い方が良いのではないかと思います。

NDC分類を使う

図書館特有のテクニックとしてNDC分類(日本十進分類法)を使うという方法があります。図書館の本には背にラベルが貼付されていますが、あれに書いてある番号のことです。

私はよく国会図書館デジタルコレクションで地域の情報や鉄道路線の情報を検索しますが、例えば”小布施町”というキーワードのみで検索すると膨大な資料がヒットします。

そんな中で調べたい資料の内容が民話や習慣などの民俗学的な内容と決まっている場合は 3 社会科学 のカテゴリーに含まれる 38 風俗習慣・民俗学・民族学 に絞ればおおよそ絞り込み完了となります。

NDC分類にはさらに下のカテゴリーもあるので、もっと絞り込んで 386 年中行事、祭礼 で絞る等すればかなり資料の解像度は高くなってきます。

後述しますが国会図書館の資料には年報類や要覧類も相当数含まれていて、検索の際に大量に出てくるのでそれらを表示させないのに便利な方法です。

NOT検索を使う

国会図書館デジタルコレクションではWeb検索のようなNOT検索もできるので、うまく使うと効率の良い検索ができます。

先に述べましたが資料の中には年報や要覧が非常に多く、そのまま検索すると商工名鑑や人名録などが多数ヒットします。これらの資料が調査の対象でない場合はキーワードの段階でNOT検索に入れてヒットしないようにしてしまうと結果が見やすくなります。

記法が独特で、「[検索キーワード] NOT [除外したいキーワード]」という書き方になります。

長野電鉄について調べたいが、年報類は除外したい

長野電鉄 NOT 年報

これだけでも結果を2/3くらいに圧縮することができます。

また、複数設定することもできます。

長野電鉄について調べたいが、年報と人名録は除外したい

長野電鉄 NOT 年報 NOT 人名録

こんな感じで大丈夫です。

この方法はかなり検索結果を圧縮できるのですが、副作用としては全文検索でのNOT検索になるので、本文中に「昭和○○年陸運年報より引用」という文字列を含む資料があった場合は検索結果に出なくなります。

そのため、NOT検索に使うキーワードはあまり一般的な単語にしない方が良いと思います。

まずは大ざっぱにNOT検索で興味深い資料を探ってみて、自分の見たい資料がNDC分類のどこにあることが多いかを把握していくと調べ物の効率が良くなると思います。

【国会図書館】Sky map of Nagano : 航空写真集長野

国会図書館デジタルコレクションで閲覧できる本の紹介です。今回は1982年に発行された” Sky map of Nagano : 航空写真集長野” という本です。

Sky map of Nagano : 航空写真集長野

[国立国会図書館デジタルコレクション]

この本は長野市市街地の航空写真をまとめた本です。古い航空写真であれば国土地理院の情報が閲覧可能ですが、この本の貴重なところは写真が全て斜め写真であることです。

市内各地の様子がかなり細かく記録されています。主要な公共施設と、この本に広告出稿した企業の場所については注記が入っているので現在の様子との比較も割としやすいと思います。

変化のあるところ

やはり現在と変化のあるところがまずは気になるものですが、長野駅東口周辺はかなり当時と様子が違うようです。ホクト文化ホールは写真から察するに建設中で、周辺には県の農業試験場が広がっています。

また、東口の駅前はほとんど国鉄の施設で占められていて、実質駅の出入り口は善光寺口のみといった感じです。

市街地北部の方を見てみると、現在ホテルアマンダンスカイのある場所には長野郵便貯金会館という注記があります。郵便貯金会館は後にメルパルクという名前になり、長野の場合はつい最近まで東口の駅前でホテルが営業していました。東口駅前にメルパルクができる前は箱清水の方に立地していたのかもしれません。

変化のないところ

やはり歴史のある大きいビルなどは現在とあまり見た目が変わっていないことが多いように感じます。今まさに建て替えが進んでいるそうですが長電パーキングや長野駅前のC-ONEビルなど特徴のある大きい建物は当時の写真でもパッと見で分かります。

また、大手自動車メーカーの店舗も建物こそ様子が違いますが、ほとんど立地は変化していないようです。

鉄道関連

鉄道関連も興味を引くところがたくさんあります。まず長野駅は従来の仏閣型駅舎の様子がはっきりととらえられています。今のように駅ビルなどはないですが、駅の規模は大きくターミナル駅としての風格が感じられます。

篠ノ井のカットも1つだけあるのですが、端の方に篠ノ井駅が写っています。現在もJR貨物の施設がある関係で非常にたくさんの側線があるのですが、1982年当時の写真では貨車が大量に留置されています。

現在は石油輸送用のタンク車を時々見かけるくらいなので、これは現在とずいぶん様子が違う感じがします。

というわけで見れば見るほどキリのない資料で大変楽しめました。正味50ページくらいなので割と気軽に見られると思います。掲載されている広告も当然ながら当時のものなので、時代を感じる広告の内容も見どころです。

【国会図書館】電車・客貨車 (ポプラ社の写真図鑑9)

国会図書館デジタルコレクションで閲覧できる本の紹介です。今回は1962年に発行された児童向けの図鑑です。

電車・客貨車 (ポプラ社の写真図鑑 ; 9)

[国立国会図書館デジタルコレクション]

おなじみのポプラ社から発行されたもので、タイトルの通り電車と客貨車の形式の紹介や構造の解説を多くの図版を使って行っているものです。

児童向けなのでほとんどの漢字にルビが振ってあります。説明も非常に平易で分かりやすいのですが、決して説明が浅いということはなく、例えば旅客車の構造の章では車体や座席、走行装置に至るまで細かい説明がなされています。大人が読んでも十分楽しめる内容だと思います。

写真や図版類も興味深いものが多く、東海道本線で高速走行試験を実施した時の小田急SE車の様子などが掲載されています。

発行時期はちょうど東海道新幹線の開業準備を行っていた期間にあたり、東海道新幹線に関する言及もかなりの紙面を割いてされています。東海道新幹線の想像図イラストもかなり面白いのですが、当初構想されていたという新幹線貨物電車の想像図なども掲載されています。

1冊でバラエティに富んだ内容を押さえつつも、個別の記事内の掘り下げがなかなかしっかりしている良書に思います。

【国会図書館】長野県史 美術建築資料編 全一巻(二) 建築

国会図書館デジタルコレクションには膨大な数の資料がありますが、文字中心の資料は面白いかどうかが判明するまでにある程度読み解く必要があります。

図版中心の書籍や子ども向けの書籍は割と短時間で面白いかどうかが分かるので、最近は写真集的なものを中心に資料を探しています。

今回は長野駅の先代駅舎の情報を探している時に、長野県の有名な建築物を収集した図録のような資料を発見しました。

長野県史 美術建築資料編 全一巻(二) 建築

[国立国会図書館・閲覧には要登録]

善光寺や松本城といった歴史的な建築物はもちろん、学校や企業の社屋などの近代の建築物も網羅されています。仏閣のような見た目で有名だったという長野駅の先代駅舎も掲載されています。

掲載されているのは1990年時点で現存していた建物ということなので、まだ現存しているものもあると思います。建築めぐりのガイドブック的にも使えそうな資料だと思います。

【国会図書館】長野市都市計画図 街路・地域・公園・飛行場

国会図書館デジタルコレクションで発見した面白い書籍の紹介です。

今回は書籍といっても地図で、1938年に長野市が刊行した長野市都市計画図です。都市計画図は現在も多くの市町村で定期的に刊行されています。

長野都市計畫圖 街路・地域・公園・飛行場

[国立国会図書館・閲覧には要登録]

長野市の地図なのですが、1938年当時の長野市なので現在に比べると市域は非常に狭いです。それぞれ北端は現在の浅川東条付近、東端はJR北長野駅付近、南端は犀川、西端は裾花川というところです。

タイトルにある飛行場という表記がさっそく気になりますが、これは現在の長野市川井新田付近にかつて長野飛行場という飛行場があったことによるものです。現在も石碑が残っているそうです。時節柄を反映してか、場所については大ざっぱに示してあるものの構造物等は図化されていません。

その他の面白いポイント

  • 当時から意外と変わっていない幹線道路の線形
  • 列車工場併設の国鉄長野駅
  • 裾花川沿いに健在の善光寺白馬電鉄の線路
  • 現在と違い県庁の北にある刑務所
  • 犀川沿いにある広大な”鐘ヶ淵紡績工場”(旧カネボウの工場)

縮尺が1/10,000なので個別の建物も細かく図化されていて、見ているとまだまだ発見がありそうです。正味8ページですぐに見られるのでおすすめの資料です。

国立国会図書館デジタルコレクションがリニューアル

12/21付けで国立国会図書館デジタルコレクションがリニューアルしました。

2022年12月21日 「国立国会図書館デジタルコレクション」をリニューアルしました

[国立国会図書館Webサイト]

今回のリニューアルで全文検索可能な資料が約5万→約247万に大幅に増加したほか、Web検索などで良くある画像による検索も可能になりました。

全文検索は検索結果から資料の該当部分に直接飛ぶことができるので、調べたいキーワードが明確な場合に威力を発揮します。かなり効率良く調べ物ができるようになっていると思います。

ページそのもののUIも見直され、全体的に操作がしやすくなっていると思います。

今年度の国会図書館の予算案を見るとこの国立国会図書館デジタルコレクションの個人送信サービスの拡充には約9,200万円が計上されているということです。もちろん決して安くはない金額ですが、個人送信サービスの開始と今回のリニューアルのことを考えるとなかなかに価値ある予算の使い方だと感じます。

【国会図書館】(長野電鉄)四十年のあゆみ

国会図書館の”個人向けデジタル化資料送信サービス”で長野県に関する面白い情報が掲載されている本がないかを調べています。

最近見た中では1960年に長野電鉄から発行された”四十年のあゆみ”という本が非常に興味深い内容でした。

四十年のあゆみ

[国立国会図書館・閲覧には要登録]

この本はいわゆる社史で、長野電鉄の創業以来からの記録がていねいにまとめられています。

長野電鉄の歴史に関しては長野電鉄百年探訪という素晴らしい本がありますが、この本は鉄道事業の記述が主となっています。こちらの1960年の社史は自動車事業や観光事業など、グループ全体の事業展開の様子も詳しく掲載されているのが特徴です。

また貴重な写真の掲載も多く、昔の駅の写真やトンネル・橋りょうの工事写真などが確認できます。

車両や設備についてもスペックを含めて細かく列挙されており、中でも鉄道車両については新造や授受・譲渡・改造に至るまで詳細な年譜が掲載されています。データ好きな方が見ても楽しめるのではないかと思います。

全体を通してみると情報量の多さが際立つ本です。本文中にも配慮した旨の記載がありましたが文字ではなく写真や表・グラフによる説明が多く、分かりやすくなっています。公共交通が好きな方にはかなりオススメできる本です。